Introducing Suginome Home in Sapporo, Japan

ハーフティンバー様式を採用した「杉野目家住宅」とは
北海道札幌市中央区の山鼻地区に建つ「杉野目家住宅」は、1933年(昭和8年)に建設された歴史的建造物であり、北海道大学(旧・北海道帝国大学)の発展と深く関わる存在でもあります。この住宅は、同大学の理学部創設に尽力し、後に学長も務めた有機化学者・杉野目晴貞(すぎのめ はるさだ)教授が、自らの住まいとして建てたものです。
当時の札幌は、都市としての整備が進む過渡期にあり、寒冷地における住宅の在り方が模索されていました。そうした中、杉野目教授は、北海道の厳しい気候に適応しながらも、文化的洗練を備えた住宅の建設を志しました。その結果として誕生した建築面積231㎡の杉野目家住宅は、木骨煉瓦造2階建て・鉄板葺きの堅牢な構造を持ちつつ、外観のデザインにはイギリス・チューダー様式のハーフティンバーを取り入れるなど、意匠性に富んだ佇まいとなっています。

設計は、北海道帝国大学営繕課の建築技師であった萩原惇正(はぎわら あつまさ)と、その弟子である岡田鴻記(おかだ こうき)らが担当し、施工は地元の今野氏が手がけました。当時の帝大教授たちの間では、新進気鋭の建築家・田上義也に設計を依頼するのが一種の流行となっていましたが、杉野目教授が高卒叩き上げの萩原氏を起用したのは、理学部本館の設計に対する評価が非常に高かったためだといわれています。つまり、この住宅は外観のデザイン性よりも、快適な住環境を重視して設計されたものでした。
その考えを反映するかのように、住宅には北海道の住宅としては初めてとなるセントラルヒーティング(集中暖房)や、大型浄化槽を用いた水洗トイレといった先進的な設備が導入されており、札幌における近代住宅の先駆的存在として大きな影響を与えました。
また、敷地内には、杉野目教授の郷里を偲ばせるクロマツやアカマツ、さらには北米原産の針葉樹も植栽され、自然と調和した美しい景観を形成しています。今日ではその文化的・歴史的価値が認められ、1999年には国の登録有形文化財に指定され、札幌市の景観重要建造物としても保護されています。
杉野目家住宅は、単なる個人邸宅を超え、学術の精神と近代建築の融合、そして札幌の都市文化の成熟を象徴する貴重な歴史的遺産といえるでしょう。
「杉野目家住宅」の修繕
日本ティンバーフレーム協会の設立会社である山一設計は、2008年から2019年にかけて、玄関扉および勝手口扉の交換、外壁腰壁(洗い出し仕上げ)の補修、外壁(ドイツ壁)の修繕、外部付柱の修理、外壁の塗装、内部床の一部補修、洗面化粧台の改修、さらには園庭周辺の整備など、順次改修工事を実施してきました。

